2005年5月30日 2004年ワースト邦画を見る

  週刊文春に2004年ワースト邦画という記事が出た。残念ながら、私は記事自体は見逃したが、ネットによると栄えある第一位は「デビルマン」で2位は「CASSHERN」だそうだ。見たよ、もちろん、両方とも。「CASSHERN」は劇場まで行って見た。被害を最小限に食い止めようと思ったからだ。私のことだから、ダメな作品だと分かっていてもDVDがリリースされたら買ってしまうに違いない。邦画のDVDは高いのだ。新作ともなれば6,000円近くする(最近はもう少し下がって5,000円弱ぐらい、それでも洋画新作より1,000円ほど高い)。劇場で見れば1,700円で済む。同じ考えから、「デビルマン」も観に行くつもりだったが、行かないうちに、あれよあれよと言う間に打ち切りになってしまった。よっぽどデキが悪かったのか、10日ぐらいじゃなかったか?まあ、これは仕方が無い。ガキの頃からのデビルマン・ファンとしては、少々デキが悪くてもDVDを買わずばなるまいなあ。
 で、買ったわけだ。いやはや、酷い。この筋金入りのデビルマン・ファンが、2回見る気にならない。週刊文春の評価も演技陣が未熟すぎるということだったらしいが、主なキャストにほんとの役者がいないじゃないか。なにせ一番存在感あるのが小林幸子と鳥肌実だもんな、これじゃどうしようもないわ。
 企画段階で失敗が決定していた、という印象だ。企画としては伊崎兄弟を見せよう、冨永愛を見せよう、酒井彩名を見せよう、渋谷飛鳥を見せよう、そのための題材としてデビルマンを使おう、すなわち、アイドル映画だ。だから、この際演技については論評しないが、もうちょっと特殊メークとかちゃんとしてやらないと、シレーヌなんか70年代の実写ヒーローものの悪者というか、まったくコスプレそのものだ。デビルマンという作品に思い入れのまったく無い人が見てもずっこけてしまうだろう。これじゃあ、冨永愛がかわいそう。いっそのこと、フルCGアニメにした方が良かったんじゃないか、と思ってしまう。アイドル映画にするなら題材を別にすべきだし、デビルマンを作るなら作品自体への強いこだわり、思い入れをもって作った方が良いものができるだろうに。
 一方の「CASSHERN」だが、結局DVDも買ってしまった。中古で、ポイントや中古ソフトキャンペーン割引などを使って3枚組を2,000円そこそこで手に入れることができた。だったら、劇場に行かなければ良かったと後悔したが、追いつかない。私は、世代的にはアニメ版に熱中した世代になるのだが、アニメ版は一度も見たことが無い。おそらく午後7時台に放映されていたのだろう。私の両親はNHK党であったから、7時のニュースは絶対に見なければならなかったので、7時台のドモ番を見ることができなかった。「新造人間キャシャーン」は流行っていたが見ておらず、他にも「超人バロムワン」や「ロボット刑事K」なども見れなかった。
 そんなわけで、「デビルマン」とちがって、思い入れがまったく無い。そういう状態で見たと言うことをまずご承知置きいただいた上で、この映画は致命的な失敗をしており、それがなければまずまずだと思う。まず、この「CASSHERN」は反戦映画であろう。甘ったるいたるい反戦映画。もう、頭が痛くなってくるほど甘たるい反戦映画を2時間以上も見せられた挙句、ラストに反戦メッセージのナレーションを聞かされる。だったら初めから講演会にすればいいじゃないか。映画は無駄である。この無駄な反戦メッセージの朗読は途中でも何度か台詞のやり取りとして唐突に挿入される。わざわざそのためのシーンを作って挿入されている。それがすべてを台無しにしている。封切り後すぐにリメイクのオファーが殺到したそうだが、おそらく「俺がやったらもっと良いものができる」と思った業界人が多かったのだろう。
 それに、状況判断がまったくできず、ただただ感情に突き動かされる間抜けで、戦うたびに負けて傷ついてめそめそするヒーロー像は一体何なんだ?最近じゃあ、ヒーローって、そういうものなのか?こんなに魅力の無い主役も珍しい。まあ、確かに弱々しいヒーローもいないことは無い。アイアンキングだとかテッカマンだとか。あるいは、「新造人間キャシャーン」というのはそういう方向の物語だったのだろうか。そのあたり、見ていない私としては判断がつかないのだが。
 他にも、あまりにあからさまにアニメになってしまうシーンとか(おそらくわざとやったのだろうが)、CGがはっきりとCGしてしまっていることとか、気にいらないところは多々あるが、要潤の凶悪な表情は良かったし、なにより三橋達也氏の遺作として記憶にとどめて置けるだろう。「デビルマン」の方は・・・う〜ん、困ったなあ。