2001年2月17日  弾劾裁判

  福岡高等裁判所の判事が妻が容疑者となっているストーカー事件につき、福岡地方検察庁の次席検事から捜査情報の提供を受けた。事の経過はよくご存知のことと思う。以前、「全部×」のところで主張したように、これは司法が自分たちの既得権益擁護のために活動していることの証左である。忌避を申し立てられて関係ないと上申するなど厚顔無恥の極みである。実に腹立たしいが、これを国民として正す方法はないのだろうか。
  公民の授業で習ったが、裁判官は国会の弾劾裁判所によってしか罷免されない。では、弾劾裁判所に裁判官を被告として引き出すことができるのは誰なのか?どういうときに弾劾裁判所は開かれるのか?国民が弾劾裁判所に裁判官を訴追できるのか?
  弾劾裁判所は憲法の第64条に規定されている。一方、裁判官は憲法第78条によって身分が保障されている。すなわち、心身の故障により職務遂行が困難と判断された場合(この場合は通常の裁判による)を除き、公の弾劾によってしか罷免されない。そして、弾劾裁判所の手続きなどは裁判官弾劾法に定められている。ちなみに懲戒については裁判官分限法に規定があって、高裁の裁判官は最高裁大法廷における裁判によって懲戒が決まる。行政府は裁判官に懲戒処分をすることはできない(憲法第78条)。
  裁判官が訴追をうけるべき事由は@職務上の義務に著しく違反し、又は職務を甚だしく怠ったとき。Aその他職務の内外を問わず、裁判官としての威信を著しく失うべき非行があったとき。の二つとされている(裁判官弾劾法第2条)。訴追を行うのは裁判官訴追委員会で、この委員は国会議員である。訴追委員会は独自に訴追することもできるが、請求があればその事由の調査に入らなければならない(同第11条)。訴追委員会に対する訴追の請求は誰でもできる(同第15条@何人も、裁判官について弾劾による罷免の事由があると思料するときは、訴追委員会に対し、罷免の訴追をすべきことを求めることができる)。また、各裁判所も自らの裁判官、や下級裁判所の裁判官について訴追を請求することができる(同第15条A、B)。請求はその事由を記載した書面によらなければならないが、証拠は必要でない。
  ただし、虚偽の申告をすると罰せられ、3ヵ月以上10年以下の懲役刑になる(同第43条@裁判官に弾劾による罷免を受けさせる目的で、虚偽の申告をした者は、三月以上十年以下の懲役に処する)。また、証人等が正当の理由無く出頭しなかったり、虚偽の記録を提出したりすると10万円以下の罰金になる。
  この判事の行為は「裁判官としての威信を著しく失う非行」にあたると思うがどうか?裁判官たるもの、検事からそのような連絡があったとしても撥ね付けるべきであって、妻に対しては捜査に協力し、無実であるならば濡れ衣を晴らし、犯罪事実があったならばきちんと裁判をうけるように言うのが至当であろう(判事はそう言ったといっているが、妻の供述は「徹底抗戦するしかないと言われた」となっている)。今後、捜査が進展してこの判事が証拠隠滅に関わっていたということになれば当然弾劾(それ以前に辞職してしまうかもしれないが)ということになるだろうが、現時点で既に訴追請求は可能であろう。やろうかな・・・