2004年9月20日 ウェイト・トレーニングの発展段階(1)

反省  なんと、前回の更新が8月24日だ。今年ではない、去年のだ。(むむ+o+;)絵心が無いのに図を用いようとしたのがそもそもの誤りだった。その上、次回約束のロープ・クランチは最近やめてしまった。重量を増やしていった結果、腹筋より前腕がもたなくなったからだ。今はアブ・ベンチ・クランチを見直しているところである。よって、今回は文字だけのコンテンツにする。図解入りは、まず図が完成してから予告を出します(弱気)。

 ウェイト・トレーニングには4つの発展段階があると思う。これを下から初歩、初級、中級、上級と名付けよう。
 初歩の段階は、知識もなく、ジムに入会して手取り足取り指導されて、とりあえずフォームを覚える段階である。外形的に見て正しいフォームになっていることが重要で、使用重量を増やすこともさほど必要ではない。1日で全身をトレーニングし、週間頻度2〜3回で良い。目指すところは(1)正確なフォームの習得、(2)神経系の確立である。神経系の確立とは、運動単位の運動への参加の増大のことであり、一度に動員できる運動単位を増加させることである。これにより、筋量は増えないままで使用重量が増加する。したがって、使用重量を増やすことは目的の序列では下になるが、増やさない方が良いわけではない。要するに、使用重量の目標を立ててそれに向けて努力する段階ではないということだ。この初歩の段階では、フォームの習得に当たって効果を得ることよりも安全にプライオリティを置くべきだ。同時に、知識として何が危険で、危険を避けるためにはどうするべきかということも習得する必要がある。
 この段階では、トレーニングの効果については筋肉痛をもって知ることになる。トレーニングをすれば苦しいし汗もかくが、セットの最中はもちろん、セットを終了した後でもターゲットとする筋肉に効果があったかどうかを判定できるような疲労感がない部位もある。それがどの部位になるかは人によるだろうが、おそらく大胸筋はそれが難しい部位の代表であり、逆に分かりやすい部位の代表が上腕二頭筋だろう(この段階で大胸筋への効果が分かりにくい原因の多くは、大胸筋よりも三角筋前部ヘッドや上腕三頭筋を使ってプレス運動をしてしまうことにある)。大胸筋のようにトレーニング直後に疲労や苦痛が感じにくい部位も、翌日以降の筋肉痛は間違いなく発生する。
 私見では、初歩の段階はほぼ3ヵ月であろう。
 次の段階が初級である。この段階になると、目標重量を定めて使用重量を上げていく努力をするようになるし、それが必要でもある。また、トレーニング種目を増やしていったり、それにつれてスプリット・ルティンを採用したりすることもある。
 初級段階で種目を増やすことに否定的な意見がある。この段階ではそれぞれの部位に代表的なコンパウンド種目、ないしは高重量を使用しうる種目を1種目だけ採用して、使用重量を上げていくことに専念すべき、すなわち、筋力および筋量を増大すると同時に、腱や関節を強化して以後のトレーニングの土台となる身体を作るべきだとする意見である。私も、自分自身に対する反省も含めて、基本的にこの意見に賛成である。ただし、トレーニングを開始する年齢が低く、骨格に影響を与えることが可能な年齢である場合は、その限りではない。骨格に影響を与えることができるのは概ね18歳までが限度と考える必要がある。それより若い年齢から明快にコンテスト・ビルダーになることを念頭においている場合は、胸郭の拡大と鎖骨の伸長を念頭に置いたトレーニングをする必要がある。残念ながら一般的に最初にジムで教えられる種目では胸郭の拡大や鎖骨の伸長は得られない。
 ウェイト・トレーニングをもっぱらにするジムで胸郭の拡大をするにはブリージング・スクワットが考えられるが、これはトレーニングの強度が強く、正しい知識のあるインストラクターがついていないと危険を伴う。私ならば、そんなことをさせるより水泳を勧めるだろう。もしも、将来コンテスト・ビルダーになることを目指す15歳の少年が私にアドバイスを求めたならば、私は迷わず「20歳までは水泳をやれ。ただし、目指すところは胸郭の拡大と鎖骨の伸長だ。数値的な目安としては肺活量を伸ばすこと、見た目の目安としては肩幅の広さだ。胸郭の拡大や鎖骨の伸長は今しかできないのだから、このチャンスを逃すな。ジムに来るのはその後で良い。」と答えるだろう。筋肉は、むしろ30歳代の方が増やしやすいが、骨は10歳代でしか変えられないからだ。
 胸郭、鎖骨の問題を棚上げすれば、この段階ではひたすら重量を増やしていくことに注力するべきである。ただ、そのためには初歩の段階より週間頻度を落とす必要が出てくるだろう。トレーニングのレベルが上がり、強度が増してくれば、当然にして疲労も増えて回復にかかる時間も多くなる。可能であれば、この段階で「週」というサイクルを否定してしまう方が良いかもしれない。だが、金利生活者でもない限り世間の時間割にしたがって生きざるを得ないのだから、「週」の概念を壊してトレーニングをするのは難しいだろう。その場合は世間に従うことを勧める。なにはともあれ、トレーニングを「続ける」ことが何よりも大事なのだから、世間とは軋轢を起こさない方が良い。それに、世間と軋轢をおこすとストレスになって筋肥大にもマイナスになる。
 初級の段階で重量目標を持つようになると、往々にしてフォームが崩れる。チーティングを覚えることは悪いことではないが、正しいチーティングを覚えれば良いのだが、自己流だと怪我をする。この段階で大きな怪我をした人は、まず間違いなくトレーニングから離れていってしまう。本当は、使用重量を上げること自体が目標ではないのだが、この段階の人にそれを説明してもおそらく理解できない。対策としては定期的にフォームをチェックしてもらって、怪我をしないようにすることだろう。
 トレーニングの効果を知ることに関しては、この段階まで来るとセットを終了した時点で「効いたぁ〜」という台詞が出るようになる。つまり、翌日以降の筋肉痛に頼らなくても効果の判定が自分でできるようになる。しかしながら、1レップ目からでターゲットとする筋肉にストレスがかかっているかどうかを判断しながら修正していくということはできないだろう。おそらく、セットの途中でストレスを感じることができても、それは全身的にかかるストレスと認識する場合の方が多いはずで、むしろセットを終了してインターバルに入ったときに感じる疲労感、苦痛の方が大きいし、そのことの方が認識しやすいだろう。
 初級の段階は、最低でも6ヵ月、まず1年以上続ける必要があるが、時間で考えるより使用重量で考えた方が良いかもしれない。例えば、ベンチ・プレスが100kg、スクワットが150kgに到達するまで、などである。